なぜ必敗の戦争を始めたのか

 本日ご紹介する一冊は「なぜ必敗の戦争を始めたのか/半藤一利編・解説/文芸春秋」です。
 この本は昭和52年から53年にかけて行われた、陸軍エリート将校による座談会を記録したもの。

 ボクが特に印象深かったのは、昭和16年1月に井上成美中将(当時)が提唱した「新軍備計画論」です。井上氏は論理的に「対米戦争に勝つことは絶対に不可能なり」と主張しているという。
それは次の6条件をあげている。
①米本土の広さ。占領は不可能。
②首都ワシントンの攻略不可能。
③米軍事力は強大で殲滅は不可能。
④米国の対外依存度の低さと、資源の豊かさから海上封鎖の無効。
⑤海岸線の長大さ、陸地の奥行きの深さから海上からの攻撃封鎖の無効。
⑥カナダと南米の中間にあり、陸続きの地理的位置からの米本土の海上封鎖は無効。
とある。(P227より引用)

その逆は日本だとわかりますよね。
①日本本土の広さ。占領は可能。
②首都東京の攻略は可能。
③日本の軍事力は殲滅可能。
④日本の対外依存度の高さと、資源の乏しさから海上封鎖は有効。
⑤日本の海岸線の長さ、陸地の奥地の狭さから海上からの攻撃封鎖は有効。
⑥日本は島国であり、日本本土の海上封鎖は有効。
と表現できる。

 ではなぜ無謀な戦争を始めたのか?
 それは本書によると「ドイツは勝つだろう」という見通しで始めたというんだから、無責任というか、戦略のなさに空恐ろしさを感じました。

更に現代なら
⑦海岸線に原発が54基あり、攻撃は有効。
とも書ける。

ですから地政学的に見ても、日本は戦争をしてはいけない国。だから特に東アジアとは、絶妙な距離感でつき合っていくしかないとボクは思うのですよ。

 更に言うとこの座談会を読み進めていっても、明確な意志をもって戦争を始めたということが伝わってこない。陸軍は北(ソ連)を目指すべしと言い、海軍は南(フランス領・イギリス領)を目指すべしと言う。まるで別の国の軍隊が議論しているような雰囲気で、長期的な戦略もなければ物資の安定調達の方法も見通せていないのに戦争を始めちゃったとボクには読めた。

 この無責任さや長期的な戦略のなさは今に通じてるとボクは思う。

 果たして、コロナ禍の緊急事態宣言は5月に解除されたものの、第2波の備えは十分なのか、なぜオリンピックは来年開催できると判断しているのか、日本の財政戦略はどのように見直していくのか、さっぱり見えてこない。むしろ見たくないことは見ないようにし、精神論だけで乗り切ろうとしているのではないかと疑っているボクなのです。

 過去の失敗から学べることはたくさんあり、それを提言している人もいるのに、政府はそういう声に耳を傾けているのか、はなはだ疑問なのでありました。



なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議 (文春新書) - 半藤一利 編・解説
なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議 (文春新書) - 半藤一利 編・解説


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この記事へのコメント

2020年06月30日 22:21
カーネギーじゃなくハリマンでした(^^;;
2020年06月29日 21:36
私もこういったテーマは非常に興味があり、本を読んだりドキュメント見たりしましたね。この本のエッセンスもかじりました。
日中戦争の膠着状態の中、アメリカへ先制攻撃をして短期決戦で優位に立ち、条件のいい講和を結ぼうとしたのですよね。当時の人も、決して長期戦で勝てるとは思っていなかったはず。
ただ、国の熱い精神的な盛り上がりや軍部の狂信的な勢い。そういう冷静な議論や発言ができなくなるような状況が非常に怖いなと思います。
悲惨な体験を、後世に語りついでいければと切に思います。日本だけではないですね。
2020年06月28日 11:05
欧米の植民地にならないために日本人はとんでもない税金にも耐えて富国強兵を目指しました。日本は当時のGNPの2.5倍、国家予算の60年分の負債を積み上げて日露戦争に挑んだ。日露戦争にロシアに相打ちにできた理由は、欧米から国債を買ってもらえたからです。満州を一緒に開発しようと戦後訪れた鉄道王カーネギーの申し出を伊藤博文も首相(桂?)も同意し確認書を交わしたのに。日露講和でぼろくそにウィッテにやられて帰国した小村寿太郎が、「日本人の血で取った満州を一緒に開発とは何事か!」っと猛反撃してパーにした。ここからアメリカは日本を倒す決意をしました、根本はここしかありません。伊藤もだらしがないが軍と一緒になって大恩ある米国を敵にしてしまった小村寿太郎さんは最悪の人だと思います。
2020年06月27日 15:08
半藤さんの本、色々読みましたが、
この本は、戦争を起こした張本人たちの
証言がもとになってる点で、大変貴重な
ものだと思います。私は戦後生まれですが、
子供の頃に、親類縁者で亡くなった方の話を
よく耳にしました。ですから、過ちを繰り返さず、
平和な世界を目指すというのは、日本人全ての
願いであり、亡くなった方々に報いる唯一の
方法だと思ってたんですが、最近では、
どうも別の事を考え始めた人々もいるようで…。
この本は、現在の日本に対する警鐘かも知れません。
確かに、将来の見通しもないまま、いずれ
何とかなるだろうと、赤字国債を増やし続けてきた
政治家たちの姿には、かつて過ちを犯した
軍人らの面影がダブって見えますね。
2020年06月27日 10:18
過去の失敗に学ばない。
暗澹たる気持ちになり、情けなく思います。
あんたらアホかと言いたくなります。
2020年06月27日 09:56
こんにちは

戦略的には、ほとんど精神だけで戦争をしてますね。
ただ、当時日本はそれだけ追い込まれていた状況だったんですね。